工場や倉庫の在庫管理では、先に入庫したものから出庫・使用する「先入れ先出し」が基本的な管理方法の一つです。
しかし、先入れ先出しのルールを決めていても、古い在庫が棚の奥に残ったり、新しく入庫したものから使われたりすることがあります。
こうした問題を防ぐには、作業者の注意に頼るだけでなく、古い在庫を見分けやすくし、正しい順番で取り出せる仕組みを作る必要があります。
この記事では、先入れ先出しを徹底するための改善アイデア7選を、「視覚的な工夫」「物理的な工夫」「運用・管理の工夫」の3つに分けて紹介します。手作業での管理が難しくなった場合の対応方法も解説します。
先入れ先出し(FIFO:First In, First Out)とは、先に入庫した在庫から順番に出庫・使用する管理方法です。
例えば、同じ部品を4月1日と4月10日に入庫した場合、原則として4月1日に入庫した部品から使用します。
先入れ先出しを行うことで、古い在庫が長期間保管されたままになることを防ぎ、在庫の滞留や保管中の品質劣化などのリスクを抑えることにつながります。
先入れ先出しが守られない背景には、作業者の意識だけでなく、保管方法や管理の仕組みに問題があることもあります。
このような現場では、単に「古いものから使う」と周知するだけでは改善が難しい場合があります。
そのため、古い在庫が分かる表示、取り出しやすい保管レイアウト、作業ルールの整備を組み合わせて考えることがポイントです。
先入れ先出しの改善方法は、大きく3つに分けられます。
視覚的な工夫は「どれが古いか分かるようにする」、物理的な工夫は「古いものから取り出せるようにする」、運用・管理の工夫は「決めた順番を継続して守れるようにする」ための対策です。
すべてを一度に取り入れる必要はなく、現在の保管方法や品目数に合わせて、実践しやすい方法を選んでみてください。
まずは、在庫を見ただけで入庫時期や取り出す順番を判別できるようにする方法です。
比較的取り入れやすい方法もあるため、身近な工夫から検討してみましょう。
入庫した月や週ごとにラベルの色を変える方法です。
例えば、4月入庫分は青、5月入庫分は黄色といったルールを決めると、入庫時期の異なる在庫を見分けやすくなります。
ただし、色分けだけでは同じ月や週に入庫した在庫の順番までは判断できません。
入庫日やロット番号も併記し、色分けルールの統一も必要になります。
箱やパレットなどの見やすい位置に、入庫日や管理番号を表示する方法です。
同じ品目が並んでいても入庫日を比較できるため、古い在庫から取り出しやすくなります。
ラベルが棚の奥や箱の裏側に隠れないよう、表示する位置をそろえることがポイントです。
入庫日が同じ在庫の優先順位まで管理する場合は、入庫時刻や入庫順を識別できる管理番号などの情報も利用します。
古い在庫があることを認識していても、取り出しにくい場所に置かれていれば、先入れ先出しが守られにくくなります。保管場所や補充の動線を見直し、正しい順番で作業しやすい環境を整えます。
フローラックは、傾斜などを利用して保管物を取り出し側へ移動させる棚です。
補充側と取り出し側を分けた構造にすることで、先に補充した在庫から取り出しやすくなります。
ただし、箱の形状や重量、保管物の取り扱い条件によっては適さない場合があります。
棚の導入費用や設置スペースも踏まえて検討が必要です。
新しい在庫を補充する場所と、在庫を取り出す場所を分ける方法です。
例えば、棚の奥側から補充し、手前側から取り出す運用にすれば、新しく入庫した在庫が古い在庫より先に使われることを防ぎやすくなります。(イメージはコンビニの飲料棚のような仕組みです)
棚の前後から作業できない場合は、入庫日ごとに置き場を分けたり、古い在庫を取り出し側へ移動したりする方法もあります。
ただし、在庫を頻繁に並べ替えると作業負担が増えるため、通路や保管スペースも考慮し、無理なく運用できる配置を検討しましょう。
表示や棚の工夫と合わせて、日々の入出庫作業を統一することも重要です。
誰が作業しても同じ順番で在庫を扱えるよう、確認方法や記録方法を決めます。
入庫時のラベル表示、保管場所、出庫前の確認方法などを決め、担当者によって作業方法が変わらないようにします。
例えば、次のようなルールが考えられます。
日々の入出庫を正しく行っていても、保管中に並び順が乱れたり、古い在庫が取り残されたりする可能性があります。
そのため、品目や入出庫頻度に応じて確認のタイミングを決め、長期間動いていない在庫や保管場所の乱れを点検します。必要に応じて、置き場やラベルも見直します。
ただし、確認のたびに在庫をすべて移動させる方法では負担が大きくなってしまいます。
日常点検で済む項目と、定期的に詳しく確認する項目を分けるなどの工夫も必要です。
Excelで品目やロット、入庫日、在庫数量などを管理し、同じ品目の在庫を入庫日が古い順に並べ替えることで、先に出庫すべき在庫を確認しやすくなります。
しかし、実際の入出庫や在庫移動に合わせてExcelを更新しなければ、記録と現物の情報がずれてしまうこともあります。
取扱品目や作業担当者が増えると、更新漏れや二重管理も発生しやすくなるため、注意が必要です。
7つの方法には、それぞれ適した場面と注意点があります。
現場の課題に合わせて、複数の方法を組み合わせることも検討しましょう。
| 改善方法 | 主なメリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 1. 色分けラベル | 入庫時期を一目で判別しやすい | 色分けルールの維持が必要 |
| 2. 日付・番号表示 | 入庫順を確認しやすい | 表示・貼り替えに手間がかかる |
| 3. フローラック | 棚の構造で取り出す順番を誘導できる | 保管物・設置スペースに制約がある |
| 4. 補充・取り出し場所の分離 | 古い在庫から取り出しやすい | 通路・動線の設計が必要 |
| 5. 作業ルールの標準化 | 担当者による作業の違いを減らせる | 周知と継続的な確認が必要 |
| 6. 定期的な点検 | 古い在庫の残留に気づきやすい | 点検作業の負担が生じる |
| 7. Excel管理 | 入庫日・ロットを一覧で確認できる | 入力・更新漏れに注意が必要 |
保管する品目や数量が少ない現場では、ラベル表示や棚の配置の見直しだけでも運用できる場合があります。
同一品目を複数ロットで管理する現場や、複数の保管場所を使用する現場では、現物と管理情報を一致させる負担が大きくなることがあります。
先入れ先出しを徹底するための工夫は、必ずしも大がかりな設備やシステムを必要としません。
手作業による確認や記録でも十分に対応できる場合があります。
しかし、取扱品目や在庫数、出庫頻度が増えると、確認や記録の負担が大きくなる場合があります。
このような場合は、保管場所や作業ルールの見直しに加えて、在庫管理システムの導入も選択肢になります。
先入れ先出しの徹底以前に、帳簿上の在庫数と実在庫が合わない場合は、入出庫記録や棚卸の運用も確認する必要があります。
在庫差異が発生する原因と対策はこちら
在庫管理システムを利用すれば、入庫日・ロット・保管場所などの情報を管理し、古い在庫から優先して出庫できるよう支援する仕組みを構築できます。
アイ・シー・エスの在庫管理システム「WMSics」では、フリーロケーション管理に対応しており、品目ごとに保管場所を固定せず、空いている場所へ入庫できます。これにより、古い在庫を移動させる手間を減らしながら、保管場所を柔軟に活用できます。
また、出庫時には入庫日が古い在庫の保管場所から順に案内するナビゲーション機能があり、作業者が先入れ先出しを実践しやすくなります。
なお、管理する在庫の種類や現場の運用によって、適した保管方法やシステム構成は異なります。
現在の保管方法や出庫ルールを整理したうえで、現場に合った構成をご提案します。
先入れ先出しを徹底するには、古い在庫を見分けやすくする視覚的な工夫、古い在庫から取り出せる物理的な工夫、作業を統一する運用・管理の工夫を組み合わせることが大切です。
まずは、色分けラベルや日付表示、棚の配置変更、作業ルールの見直しなど、現場で取り入れやすい方法から始められます。
一方、品目数や保管場所が多く、手作業で入庫順を管理することが難しい場合は、在庫管理システムの活用も選択肢になります。現場の課題や在庫の特性に応じて、無理なく継続できる方法を選びましょう。

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