製造現場の組立作業では、作業手順を確認しながら、使用する部品や工具を選び、決められた順序で作業を進める必要があります。
しかし、紙の作業手順書や作業者の記憶に頼った運用では、
といった課題が生じることがあります。
こうした課題への対策として、作業手順のモニター表示や、ランプによる部品の案内、センサーによる部品の取り出しや工具の使用状況の検知、作業実績の記録など、組立作業をデジタル化する方法があります。
この記事では、組立作業をデジタル化する方法や、ポカミス防止・作業標準化・進捗管理につながる仕組みについて解説します。
組立作業のデジタル化とは、モニターやランプ、センサー、工具などをシステムと連携し、作業指示や作業結果の確認、実績の記録をデジタルで行う取り組みです。
作業手順をモニターへ表示するほか、使用する部品をランプで案内したり、センサーで部品の取り出しや工具の使用状況を検知したりすることで、作業者が正しい手順で作業を進められるよう支援します。
作業結果や作業時間をデータとして記録すれば、進捗管理や日報作成、作業改善、トレーサビリティなどにも活用できます。
組立作業では、部品の取り違えや取り付け忘れ、作業手順の飛ばし、ネジの締め忘れなど、さまざまなポカミスが発生することがあります。
作業中にミスを発見できなければ、検査工程までミスに気づけないこともあります。
ミスの発見が遅れるほど、原因調査や手直しの範囲が広がり、対応にかかる工数も増えてしまいます。
製品ごとに使用する部品や工具、作業手順が異なる現場では、作業者に多くの知識や判断が求められます。
特に、1人の作業者が複数の工程を担当するセル生産では、覚える内容が多くなりやすく、経験豊富な作業者と経験の浅い作業者で、作業時間や品質に差が生じることがあります。
作業者の記憶や経験に頼る状態が続くと、特定の作業者しか担当できない工程が生まれ、組立作業の属人化にもつながります。
組立作業の習得には、作業手順だけでなく、使用する部品や工具、注意点、異常が発生した場合の対応なども覚える必要があり、一人で作業できるようになるまでに時間がかかります。
また、熟練者が新人に付き添って指導する場合、指導者も教育に時間を割く必要があります。
さらに、教える人によって指導内容が異なると、作業方法や判断基準にばらつきが生じる可能性があります。
紙の作業日報や手書きのチェックシートで実績を管理している場合、作業が終わるまで進捗を把握できなかったり、記録した内容をあとからExcelやシステムへ転記したりする手間が発生します。
作業者ごとの組立結果や作業時間が記録されていなければ、どの工程に時間がかかっているのか、どこでミスが発生しやすいのかを分析することも難しくなります。
組立作業をデジタル化する方法は、作業手順書をモニターへ表示するだけではありません。
作業内容や現場の課題に合わせて、部品棚や工具、センサーなどを連携し、作業者が正しい手順で作業を進められる仕組みを構築できます。
ここからは、当社が構築した組立作業支援システムのデモ環境を例に、組立作業をデジタル化する4つの方法を紹介します。
組立工程ごとの作業内容や注意点、使用する部品などをモニターへ表示します。
作業の進行に合わせて次の手順を表示することで、作業者は画面を確認しながら順番に作業を進められます。
画像や図、動画などを組み合わせれば、文章だけでは伝わりにくい作業内容も視覚的に説明できます。
また、現在の作業箇所が明確になるため、紙の手順書をめくったり、該当する工程を探したりする手間の削減にもつながります。
部品棚に取り付けたランプを点灯させ、次に使用する部品の場所を作業者へ案内します。
品番や保管場所を一つずつ確認する負担を減らし、部品を探す時間の短縮につながります。
また、部品棚に設置したセンサーで、部品の取り出しを検知します。
システムによっては、正しい棚から部品を取り出すと次の作業へ進み、誤った棚から取り出した場合は画面にエラーを表示して、作業者に修正を促します。
部品を取り出すタイミングで正誤を確認できるため、取り違えや手順ミスの防止につながります。
こうした仕組みは、組立工程におけるポカヨケにも活用できます。
工具に取り付けたセンサーをシステムと連携し、工具の使用状況や作業の完了を検知します。
例えば、電動ドライバーによるネジ締め回数を検知することで、ネジの締め忘れを防ぎやすくなります。
検知できる内容は、使用する工具やセンサー、システムの構成によって異なります。
対象となる作業や防ぎたいミスに合わせて連携する機器を選びます。
作業者、製品、作業日時、組立結果、作業時間などの情報をシステムへ記録・管理します。
紙の日報への記入やExcelへの転記を減らせるほか、作業の進捗状況や実績を把握しやすくなります。
記録したデータは、日報の作成や作業時間の分析、品質・コスト・納期(QCD)の改善などに活用できます。
また、製品やシリアル番号と作業結果をひも付けることで、いつ、誰が、どのような作業を行ったかを確認するトレーサビリティにも利用できます。
ただし、記録できる項目や他システムとの連携方法は、システムの構成によって異なります。
導入前に、収集するデータと利用目的を整理しておく必要があります。
組立作業をデジタル化することで、ポカミスの防止だけでなく、作業の標準化や教育負担の軽減、実績データの活用など、さまざまな効果が期待できます。
| メリット | 期待できる効果 |
|---|---|
| ポカミスの防止 | 部品の取り違え、作業手順の飛ばし、ネジの締め忘れ、 部品の取り付け忘れなどを防ぎやすくなります。 |
| 作業品質の安定化 | 画面に表示された手順に沿って作業を進めることで、 作業者による品質のばらつきを抑えやすくなります。 |
| 作業の標準化・脱属人化 | 熟練者の記憶や経験だけに頼らず、 決められた手順で作業できる環境を整えられます。 |
| 教育負担の軽減 | 画面やランプによる指示を確認しながら作業できるため、 新しい作業者への説明や付き添いにかかる負担を減らせます。 |
| ペーパーレス化 | 紙の作業手順書を印刷・配布・差し替えする作業や、 手順書の保管スペースを削減できます。 |
| 作業データの活用 | 組立結果や作業時間を記録し、進捗管理、日報作成、作業改善、 トレーサビリティなどに活用できます。 |
※ 得られる効果は、デジタル化する工程やシステムの構成、運用方法によって異なります。
組立作業支援システムは、作業内容や検知したい情報に合わせて、パソコンやモニター、部品棚、工具、センサーなどを組み合わせて構成します。
すべての機器が必要になるわけではありません。
現在発生しているミスや、デジタル化したい作業範囲に合わせて構成を検討します。
組立作業支援システムは、管理用パソコンや作業指示モニター、部品棚、工具、センサーなどを連携して構成します。
主な構成要素と役割は次のとおりです。
| 構成要素 | 主な役割 |
|---|---|
| 管理用パソコン・サーバー | 作業手順や製品情報、作業実績などを管理します。 |
| ステーションPC・モニター | 作業者へ作業手順や注意点、進捗状況、エラーなどを表示します。 |
| 部品棚・ランプ | 次に使用する部品の保管場所をランプで案内します。 |
| センサー | 部品の取り出しや工具の使用状況などを検知します。 |
| 電動ドライバーなどの工具 | センサーなどと組み合わせ、 工具の使用状況や作業の完了をシステムへ送信します。 |
| バーコードリーダー | 製品や作業指示、作業者などを識別し、 表示する作業手順の切り替えなどに使用します。 |
| 操作ボタン | 次の作業への移行や作業の一時停止など、 現場での操作に使用します。 |
| データベース | 作業結果や作業時間などの実績データを保存します。 |
組立作業支援システムは、作業手順の準備、システムでのデータ管理、現場での作業指示・実績収集という流れで運用します。
| 流れ | 内容 |
|---|---|
| 1.事前準備 | 製品ごとの作業内容や使用部品、注意点を整理し、 作業手順データを作成します。 |
| 2.データ管理 | 作成した作業手順をシステムへ登録し、 対象となる製品や工程とひも付けて管理します。 |
| 3.現場運用 | モニターやランプで作業を指示し、 センサーなどで作業の実施・完了を検知・記録します。 |
はじめに、組立工程で発生しているミスやムダを整理します。
部品の取り違えが多いのか、作業手順の確認に時間がかかっているのか、作業実績を把握できていないのかによって、必要な仕組みは異なります。
現場の作業者への聞き取りや作業の観察を行い、デジタル化によって解決したい課題を明確にします。
すべての組立工程を一度にデジタル化する必要はありません。
ミスが発生しやすい工程、作業者によるばらつきが大きい工程、教育に時間がかかっている工程などから対象を選びます。
対象となる製品や工程を限定することで、必要な機能や機器を整理しやすくなります。
作業手順をモニターへ表示するには、正しい作業の流れや判断基準をあらかじめ整理する必要があります。
作業者によって手順が異なる場合は、デジタル化する前に、どの手順を標準とするかを決めます。
注意が必要な箇所や間違いやすい作業は、画像や動画などを使ってわかりやすく表示できるようにします。
防ぎたいミスや検知したい作業に合わせて、ランプ、センサー、電動ドライバー、バーコードリーダーなどの機器を選びます。
例えば、部品の取り違えを防ぎたい場合は、ランプによる案内や部品の取り出しを検知する仕組みが考えられます。
ネジの締め忘れを防ぎたい場合は、電動ドライバーやセンサーとの連携を検討します。
はじめから工場全体へ展開するのではなく、特定の製品や工程に対象を絞って試験運用する方法があります。
実際の作業で画面の表示内容がわかりやすいか、ランプやセンサーが正しく動作するか、作業者にとって使いにくい点がないかを確認します。
試験運用で見つかった課題を修正したうえで、対象工程や製品を広げていきます。
作業データは、記録するだけでは改善につながりません。
作業時間を工程改善に利用する、組立結果をトレーサビリティに利用するなど、収集するデータと利用目的を決めておくことが重要です。
必要以上に多くのデータを収集すると、管理や分析の負担が増える可能性があります。
目的に合わせて、必要な記録項目や保存期間、確認方法を整理します。
在庫・図面・設備・生産情報の管理、CAD自動作図、RFID活用、既存システムとの連携など、製造現場の課題に合わせたシステム開発に対応しています。
組立作業のデジタル化では、作業指示から部品の案内、作業の実施・完了の検知、実績の記録まで、一連の作業を支援できます。
部品の取り違えや作業手順の飛ばしといったポカミスを防ぎやすくなるだけでなく、作業品質の安定化、作業の標準化・脱属人化、新人教育の負担軽減にもつながります。
導入を進める際は、現在発生している課題を整理し、対象となる工程や防ぎたいミスを明確にしたうえで、必要な機器やシステム構成を検討することが重要です。

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